【モデルコース】国東の歴史・信仰・自然と溶け合う現代アートをめぐる

​

国東市では、アートを入り口に、国東半島の歴史や豊かな魅力を体感してほしいという願いから、市内のさまざまな場所に現代アート作品を設置しています。国東半島が元からもつ神秘的な雰囲気とアートは親和性が高いと、2014年に開催された「国東半島芸術祭」以降、アートファンが注目するエリアとなっています。この記事では現代アートとカフェをめぐりながら過ごす1dayコースをご紹介します。

10時30分～祇園山プロジェクト│「光る道－階段の無い参道」「首飾り－石を持って山に登る」

写真1：作品名「光る道－階段の無い参道」。写真2：作品名「首飾り－石を持って山に登る」。撮影は2点とも島袋道浩氏

2021年、国東市の3カ所に4つのアート作品が設置されました。手がけたのはアーティストの島袋道浩氏。詩的でユーモアにあふれると同時に、社会や人々を啓発する島袋氏の作品は、世界的な評価を得ています。「祇園山プロジェクト」の2作品は旭日（あさひ）地区で鑑賞できます。「光る道－階段の無い参道」は、山頂まで続く階段のない参道の斜面に一本の白い手すりを設置したもので、日没〜22時は手すりが点灯し、一筋の光を灯します。参道を登った先にある「首飾り－石を持って山に登る」は、祇園山に捧げる首飾りをイメージして作られた作品。日本各地で集めた大小さまざまな石が環状に並んでいます。この作品は、ここへ来る人々が持ち寄った石を置いたり積み重ねていくことで育っていく作品です。ぜひ石を持って訪れてみてください。

↓↓次のスポット「Curry Cafe ぷらす」まで約5km（車で約10分）↓↓

12時00分～ Curry Cafe ぷらす│庭を眺めながらこだわりのカレーを

​写真1：オリジナルカレー750円（サラダ・佃煮付き）。ご飯は白米と発芽玄米のブレンドをチョイス。写真2：もち麦蒸しパン2個300円、くにさき緑茶400円。写真3：庭を望むカウンター席のほかテーブル席もある

呉服店として使われていた建物をリノベーションし、2020年3月にオープン。自家製の米や野菜を使用したカレーは、和風だしとスパイスで仕上げたオリジナルカレーのほか、タイカレーやキーマカレー（各750円）もあります。ご飯は白米、発芽玄米、白米と発芽玄米のブレンドから選べ、大盛や小盛も無料で対応可能。米ぬかヨーグルト、雑穀ぜんざい（各300円）などのヘルシースイーツや、国東ならではのドリンクもあるのでカフェ利用もおすすめです。「お店は懐かしさの残る田深商店街にあります。ぜひ周辺の散策も楽しんでください」と店長の田口さん。ホッとひと息ついた後、商店街を散歩するのもおすすめです。

​

↓↓次のスポット「Kunisaki House」(国東町鶴川地区)まで約1.5km（車で約5分）↓↓

13時30分～鶴川プロジェクト│「Kunisaki House」

写真：2022年3月に完成した「Kunisaki House」。民家に囲まれた敷地内で異彩を放つ。写真1：正面から。写真2：路地側から

イギリスの著名女性彫刻家レイチェル・ホワイトリード氏が手がけた作品。レイチェル氏は、特殊な方法で建物内の一部をコンクリートで型取りして立体化する作品で知られており、「Kunisaki House」も、国東市の鶴川地区で20年以上空き家となっていた木造民家の内部をコンクリートで型取ったものです。型取りされた場所は、玄関と居間、そして神仏習合の地・国東半島を象徴する神棚と仏棚が横並びになった座敷など。建物の内部空間を可視化することで、かつてこの地にあった民家の日常や地域特有の暮らしをも彫刻化したといえる作品になっています。

↓↓次のスポット「Hundred Life Houses」(国東町成仏地区)まで約12km（車で約15分）↓↓

14時30分～ 成仏（じょうぶつ）プロジェクト│「Hundred Life Houses」

写真1、2、3：2014年の国東半島芸術祭の際に発表された「Hundred Life Houses」。作品名のとおり、岩肌には、カウンターガジェットを収めた100個の小さい家が取り付けられている。地元の人や留学生などがワークショップに参加し、各自がカウンターを好きなスピードに設定。各々の速度で数字を刻む。撮影：久保貴史(C)国東半島芸術祭実行委員会

国東半島には、火砕流の影響で形成された岩場が多く、岩壁には修行僧らが祈りを込めて彫った磨崖仏や石像が数多く残っています。六郷満山霊場のひとつ「成佛寺」がある成仏地区にも、巨大な岩の絶壁からなる成仏岩陰遺跡があり、ここに｢現代の磨崖仏｣を目指して作られたのが「Hundred Life Houses」です。手がけたのは、LEDのデジタル数字を用いた作品で国際的に注目を集める宮島達男氏。「Hundred Life Houses」にも100個のデジタルカウンターが使われており、明滅する赤・青・黄色のLEDライトは1から9の数字をカウンドダウン、またはカウントアップしながら刻み、0の瞬間に暗転し、またカウントを始めます。脈々と受け継がれる生命とその営み、そして輪廻を表現した壮大なテーマの作品となっています。

↓↓次のスポット「海辺と珈琲 ことり」まで約16km（車で約20分）↓↓

16時00分～ 海辺と珈琲 ことり│時を忘れのんびり過ごせる海辺の癒しカフェ

写真1：店内からは波穏やかな向田（むかた）海水浴場が望める。写真2：初夏のブレンド400円（季節限定）、自家製チーズケーキ420円。写真3：自家焙煎のコーヒー豆は100g650円から購入できる

半島の先端・国見町の向田海水浴場敷地内にあるカフェ。かつて海の家として使われていた小屋を自らリノベーションして2013年にオープン。｢あとからじんわりおいしい珈琲｣をコンセプトに自家焙煎したコーヒーや、国東産小麦粉を使用した自家製焼き菓子などが味わえます。「向田海水浴場は静かで、海岸の原風景みたいな景色が広がります。本を読んだり、たそがれたりが似合う場所。そのひとときにコーヒーがあるといいな、と思いカフェを開きました」と店主の多田羅さん。別棟に古道具店があり、ことりの店内にも60〜70年代の器やインテリアアイテムなどが並びます。

↓↓次のスポット「息吹」(来浦地区)まで約1.5km（車で約3分）↓↓

日没～ 来浦(くのうら)プロジェクト│「息吹」

​写真：作品名「息吹」。撮影は島袋道浩氏

来浦地区の来浦海水浴場にある「息吹」は、コースの最初に訪れた旭日地区の作品と同じ、島袋道浩氏の作品です。島袋氏が2021年に発表した国東市の3カ所4作品を手がける前に初めて国東市を訪れた際、まず気になったのが、来浦の突堤にポツンと立つ壊れた古い外灯でした。その存在自体を忘れられたかのようなこの外灯にもう一度目覚めてもらいたいと考え、再び光を灯し蘇らせました。日没を迎えると、外灯は不規則なリズムで明滅を繰り返します。周囲の風景や、寄せては返す波の音と溶け合って、まさに息吹を想起させる作品となっています。

国東市ではほかにも、欧米を中心に高い評価を獲得している川俣正氏の作品「説教壇」や、彫刻家アントニー・ゴームリー氏の作品「Another Time XX」が見られます。地域の歴史や景観などの特徴から構想を得て制作されたこれらの作品を通して、さらに深く国東市の魅力にふれてみてください。

※掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。変更される場合がありますので、おでかけの際は事前にご確認ください。

※料金はすべて取材時点の税込料金です。