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教育長の部屋(2020年5月)

印刷ページ表示 更新日:2020年5月1日更新

「もうひとつの”感染症”」

 約2ヶ月前の3月、私は「新型コロナウイルス禍」を題材にこのページを書きました。そしてその文末に、「がんばろう!!国東の子どもたち、そして市民の皆さん!!」と呼びかけました。
 あれから約2ヶ月が経過し、国東市では4月8日に始業式、続いて例年よりも縮小した形ではありましたが、入学式も無事に終了することができました。久しぶりに子どもたちを学校に迎えるにあたって、先生たちは、検温、マスク着用指導、机やドアノブなどの消毒等、これまでに経験のなかった対応を余儀なくされました。ところがそれから約1週間後に、全都道府県に緊急事態宣言が拡大され、本市も4月20日から5月6日までを臨時休校としました。
 今回の新型コロナウイルス禍による損失、とりわけ経済的損失は過去最大になりそうですが、それだけではありません。子どもたちの学ぶ権利、自由に行き来する権利、友だちと交流する権利さえも奪われました。その影響はすぐには現れないにしても、こちらの損失の方がはるかに大きいと思います。
 ところで私は、感染が始まった当初から、「新型コロナウイルスによる感染拡大も心配だが、それに関する差別や偏見が拡大すること」を懸念していました。何しろ相手は”見えない敵”ですから、あの東京電力福島第一原発事故や日本各地で起きた地震・水害などの後と同じ状況があると思ったからです。
 こういった状況に対して、日本赤十字社(東京)はそれらも一種の”感染症”と位置付け、差別や偏見のまん延を防ごうとリーフレットを作成してホームページで公表しました。その中には、新型コロナウイルスは「病気」だけでなく、「不安、恐れ」、「偏見、差別」の3つの”感染症”をもたらすと指摘しています。その通り、残念ながらこれまでも、そのような事例が次々と報告されました。

■集団感染が起きたクルーズ船に乗っていた人たちの中には、帰宅後に事実と異なる噂を流された人がいた。「コロナをまき散らすな」と言われたり、友人がいわゆる濃厚接触者ではないかと疑われたりしたという事例も少なからずあった。
■ある大学の女性教授が新型コロナウイルスに感染したことを巡り、同大は、同大関係者への嫌がらせが数十件あったと明らかにした。同大によると、付属高の制服を着ていた生徒が見知らぬ男から「コロナ」と指をさされたり、職員の家族が勤務先から「出社しないでくれ」と言われたりした事例があったという。あるいは関係者が買い物先で「出てきてもよいのか?!」などと言われたケースもあったという。
■外国にいる日本人を含むアジア系の人たち、あるいは外国から帰国してきた人たちも、事実とは異なる噂による被害を受けている。また最近では、抗・新型コロナウイルス薬をアフリカで試してみてはという横暴な考え方も表出した。
■そして最も深刻な事象は、医療崩壊が危惧される中で昼夜を問わずウイルスと闘っている医師や看護師等の医療従事者やその家族に対して、「医療従事者の子どもは登園・登校しないでほしい。卒園式もお断り」などのことばをかけられたという訴えが後を絶たないという事実である。院内では自分も感染するかもしれないという医療の最前線で闘っているのに、院外では偏見に苦しめられている。
■さらに、愛媛県の市立小学校が、東京や大阪など感染拡大地域を行き来する長距離トラック運転手の2世帯に対して、子どもの自宅待機を求めた。その要請を受けて、保護者も了承して子ども3人が始業式と入学式を欠席したのだが、欠席した子ども3人の体調に問題はなかったため、その保護者が勤める運送会社から「職業差別につながるのではないか」との指摘があり、学校側は保護者に謝罪した。

 これらはほんの一部の人の言動かもしれませんが、とりわけ、院内では自分も感染するかもしれないという医療の最前線で闘っているのに、院外では偏見や差別に苦しめられているという事実を許すわけに竹の子はいきません。それでなくても世界的に多くの死者を出している悲しい現状において、”敵”は新型コロナウイルスだけで十分であり、人間同士による悲しい”もうひとつの感染症”に、私たちはかからないようにしたいものです。子どもたちの意識は、私たちおとなの意識によって揺れ動くということも心に留めておきたいと思います。