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先日、「わが国東半島」という本をいただきました。著者は平成10年にご夫婦で東京から移住して来られ、15年間、谷間の集落で暮らした方です。本には親しく暮らした地域の人たちとの、にぎやかで心温まるエピソードが数多く綴られており、「日本の村落共同体の暮らしがかろうじて残っていた最後の日々だった」と振り返っています。
この本を読ませていただき、明治大学の小田切徳美教授が提唱する「にぎやかな過疎」を思い出しました。人口が減少していても「にぎやか」な印象を持つ地域のことです。国東市も、この先、高齢化や人口減少が進んでも、活気があり、にぎやかなまちをつくっていくことが最適であると考えています。
その核となるのが、地域の生活や暮らしを守るために、地域住民が中心となって運営する「地域運営組織(Region Management Organization)」と呼ばれる新しい仕組みです。活動範囲は現在の行政区より広い「小学校区(旧小学校区)」が多く、令和6年度の調査で全国の893市区町村に8193団体あり増え続けています。
地域運営組織(RMO)は「住民が自らできることは自らで行う」という考え方のもと、地域が抱える課題を共有し、その解決策を協議する場として機能するとともに、その協議・決定を踏まえて、高齢者の声かけ・見守りサービスや子育て支援活動、公的施設の維持管理、さらには、特産品の加工・販売などの経済活動も実施している組織もあります。
住民の福祉や環境、地域経済、安全・防災、教育など、行政が担っている機能の一部を肩代わりするとともに、人口減少が進む地域の日常生活を支えるサービスや地域づくりを担う存在としての、「つながりの場」として地域を支える仕組みです。国東市で取り組んでいる「ちょいかせ」の拡大版として、加勢してくれる人、いざという時に頼りになる人を増やしていく取り組みが必要です。地域の人口が減っても、知っている人(知人口)が増えれば、日常生活の安心感が高まるからです。まずは、モデル地区を立ち上げて、市内に広げていきたいと思っています。
なお、「わが国東半島」は、くにさき図書館にもあります。